2017年9月、インド東部に位置するウェストベンガル州の農村を訪問し、住民の水道利用に関するフィールド調査を行いました。インド国内では、従来地下水のヒ素汚染が問題となっています。今回訪問した村にもヒ素に汚染された井戸が点在しており、村には政府により共用水道が導入されました。調査実施前に、村における水道利用状況・水道利用の影響要因に関する過去のデータを分析したところ、導入された水道を日頃から利用する住民がいる一方、持続的に利用せず、安全性の低い井戸を利用する住民がいること、水道利用には住民の社会ネットワーク(例えば、信頼関係による結びつき)が影響を与えている傾向があることが分かりました。そこで、今回の調査では、住民コミュニティの中でもどのような住民が他の住民の水道利用に影響を与えているのかを調べ、水道利用と住民間の社会ネットワークの関連を詳細に明らかにすることを主な目的としました。
調査では、日常的に水汲みを行う女性にインタビュー調査を行い、周囲の住民からの信頼性が高い住民が、住民コミュニティの中でどのような役割を持っているかを質問しました。すると、信頼性の高い住民たちは、住民コミュニティの中でリーダーなどの中心的役割を担っておらず、普段の日常生活におけるふるまいなどにより信頼を得ていることが分かりました。私は、事前の文献調査で、技術利用を促進させるためには、住民のリーダー的存在に積極的に技術の利用を働きかけることが効果的であるという知識を得ていたため、この発見はとても意外で、実際に現地で住民の声を聞くことの重要性を実感しました。
調査では、住民へのインタビューと並行して、村にある水源をマッピングする作業も行いました。GPSを活用し、デジタル地図上に水源の位置や種類をプロットすることで、世帯からの水源の距離や水源分布を明瞭に可視化することができました。村を歩き回りながらこの作業を行ったため、時には暑さでへとへとになりつつも、写真のような村の美しい風景を目にすると疲れが吹き飛びました。また、スコールが降れば家で雨宿りをさせてくれたり、インタビュー中にお茶を出してくれたりと、住民の方々のあたたかな気遣いが嬉しく、ありがたかったです。